連休中に読むおすすめの一冊!「キッド」木内一裕 著。

zaki

2013年04月30日 16:37

あなたは、エンターテイメント小説が好きですか?
次々と事件が起きて、息をもつかせぬストーリー展開が好きですか?
決してスーパーマンではない若者が悪党たちと闘う、痛快な話が好きですか?
逆転、逆転、また逆転と、はらはらどきどきする物語が好きですか?

そして大切なことがもうひとつ。

あなたはあまり難しいことを考えずに、スピード感あふれる物語を
リクツ抜きに、楽しめる人ですか?

これらすべての質問にYes!という人におすすめの一冊、
木内一裕さんのキッド (講談社文庫)のご紹介です。



今回は、ヘビーめの物語の紹介なので
いつもの“ですます調”ではなく、ここからはハードな文体で紹介しますね。



次々と起こるトラブル、そして大胆不敵な主人公。



放火騒動、改装詐欺リフォームさぎ、家宅侵入、債権回収、そして…死体遺棄。

この物語の主人公、石川麒一キイチ
ちっぽけなビリヤード場を経営する、二十歳のアンちゃん。
そんな、「他人に自慢できることなどなにもない」ふつうの若者が
少女からのSOSをきっかけに、度重なるトラブルに巻き込まれるハメに陥る。

しかし。
「おいおいキイチ、さすがにこれはヤバイんじゃねぇの?」と
読み手をはらはらさせながらも、彼はその持ち前の度胸と
どんなピンチに追い込まれても、決してあきらめない頭のキレ
そして、やられたら必ずやり返す!という心の強さを武器に
彼は傷つき、血を流しながらも、次々と襲いかかる窮地を切り抜け
手強い悪党たちを出し抜いていくのだ。



スピード、スリル、読むものを惹きつけるストーリー展開
そして敵味方ともに魅力的なキャラクターたち、と
近年発刊されたエンターテイメント小説の中では
おいらイチオシの傑作、とあえて断言してしまおう。


作家 木内一裕について。


木内一裕と聞いてもピンとこないかもしれませんが
彼は1980年代~90年代に大ヒットしたマンガ、BE-BOP-HIGHSCHOOLを描いた
きうちかずひろ氏と、実は同一人物。

敵も味方も、善人ではない物語。
ワルとワルとがぶつかりあって、迫力あるストーリーが展開されていくさまと
簡潔な文章で、読み手に映像をイメージさせてしまう筆力
そして、緊迫した中にもふと見えるコミカルな空気は
BE-BOP-HIGHSCHOOLとも、通じるところがあるでしょう。

実はこのたび、彼の小説家デビュー作「藁の楯」が、映画化され
私としても、次回作がとても楽しみな作家さんではあるのだけど
血なまぐさい描写や後味の苦い物語も多いので
それが苦手だという人も多いかもしれません。



そういった意味でもこの「キッド」は
木内さんの作品の中でも、エグい場面が少なく
彼の疾走感ばりばりの物語をストレートに楽しめる
いわば、木内一裕ワールドの入門編と言えるでしょう。

物語が小気味よく進んでいくので、3日もあれば読めてしまうと思います。
短いバケーションの間に、さくっと楽しむには
まさにイチオシ、の一冊です。


 

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